
コーヒー専門店「自家焙煎珈房 和(なごみ)」。扉を開けると、磨き込まれた焙煎機とジャズの音色、そして常連さんと語らう気さくなマスターの姿があります。元・中学校の美術教師だった光岡さんが、人生の節目に見つけたもう一つの表現──それが、自らの手で豆を焙煎し、味を磨き上げていく「焙煎職人」という道でした。豆の声に耳を澄まし、天候や湿度に心を配り、何度も失敗しながらたどりついた一杯。その味わいには、人生のほろ苦さとあたたかさが、静かに溶け込んでいます。
王道スタイルのコーヒー専門店
山崎町・国見の森公園近くにある「自家焙煎珈房」。扉を開けると小窓の向こうには手入れの行き届いた焙煎機が鎮座している。ジャズのスタンダードナンバーが流れる店内に目をやると造り付けのカウンター、そして棚には色とりどりのコーヒーカップが整列する。
王道のコーヒー専門店という設えに、さぞ寡黙なマスターが、と想像した人も多いだろうが、カウンターの奥には常連客と思しき人たちと気さくにトークする男性の姿。この人こそ自家焙煎珈房和(なごみ)のマスター・光岡和人さんである。

コーヒーの美味しさに魅了され…
前職は中学校の美術教師という光岡さんは、ある日劇的に美味なコーヒーに出会ったことをきっかけにコーヒーに魅了された。それ以来「こんなに美味しいものだったなんて」とコーヒー店を訪ね歩くようになった。コーヒーは豆選びも重要だが、焙煎する人によって驚くほど味が変わる。姫路にお気に入りの自家焙煎店を見つけ、毎週のように豆を買いに行くようになり、ハンドドリップに目覚めた。職員室で同僚にコーヒーを振る舞うようになった光岡さんは、コーヒー好きの先生を集めて愛好会をつくるほどに。さらにコーヒー愛は加速し、ついには早期退職を決め、焙煎職人に弟子入りすると宣言した。

第二の人生は焙煎職人として
光岡さんの熱意に、最初は反対していた奥様もお店を手伝うことをしぶしぶ承諾。退職金をつぎ込んで自宅横に店舗を構えた。ここまで聞けば、まさに人生の楽園!テレビで見るような選択に思えるが、現実は想像よりも過酷だった。いくら時間をかけて焙煎に取り組んでもオープン当初は失敗続き。「豆の状態はもちろん気温や湿度、ちょっとしたことが命取りになる」と、休日はほぼ焙煎機の前に陣取った。納得できないものは出せないと大量の豆を捨てたこともしばしばだ。「豆のピッキングで目はチラチラするし肩は凝るし、悠々自適なんてもんじゃなかった」というが、どこまでも徹底的にこだわれる焙煎職人の世界が楽しくて仕方がないようだ。


ほろ苦く、奥深い。人生のような味わいを
カウンターに立ち会話をする日々も板についてきた。放っておけない性格は今に始まったことでないようで、光岡さんに会いに元教え子や同僚が訪れることも多いという。「若いお客さんの人生相談にのっていることも、よくあるんです」と奥様は笑う。おふたりの名前に共通する漢字から名付けたという店名「和(なごみ)」には、ほろ苦さも味わい深さも包み込む、和やかな時間が豊かに流れている。

自家焙煎珈房 和について
| 住所 | 宍粟市山崎町金谷822-5 |
| TEL | 090-9706-6157 |
| 営業時間 | 8:30〜17:30 |
| 定休日 | 月曜日・火曜日 |
| アクセス | 中国自動車山崎ICから8分 |
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