
兵庫県宍粟市で77年続く収納家具メーカー「株式会社フジイ」。三代目を継いだ藤井兄弟のふたりが語る、誠心誠意の思想と、地域とともに生きるものづくりのこれから。
後編概要
変わり続ける社会に光る「誠心誠意」のものづくり。
──宍粟の製造業「フジイ」がめざす、地域に必要とされる企業の姿
2020年、株式会社フジイの経営を兄弟が担う体制がスタートしました。
「地域に必要な会社としてあり続けたい」と語るふたりが見つめるのは、予測不能な時代における企業のあり方。後半では、これからを見つめるふたりの思いを綴ります。
そこには、フジイのものづくりが、ただの技術ではなく「誠実さ」そのものとして社会と向き合っていることを感じさせる、言葉の数々がありました。
「地域に必要な会社」であるには
一雅さんが社長、郁夫さんが副社長に就任したのは2020年。当時「地域に必要な会社としてあり続けたい」という思いから「10年後には宍粟で一番人が集まる場所にしよう」と決意したという。ちょうどワークライフバランスの推進や働き方改革など、社会全体の価値観が大きく変容し始めた時期だ。その後、コロナ禍に入り、時代の流れは一気に加速した。ライフスタイルはいっそう多様になり、消費者行動はそれまでと一変した。自分の考え方や生活を大切にすることが当たり前になり、それぞれが自分の価値観でモノを選ぶようになった。オンラインでの買い物はより身近になり、情報はSNSを通じて拡散されていく。メディアとテクノロジーが進化し、それにより社会が大きく変わったことで、企業の在り方もまた常にアップデートし続けていく時代となった。
経営の中核を担うようになって5年目。「今が大きな転換期」だと、ふたりは口を揃えていう。企業価値を高め、次の世代へと受け継ぐという役割は変わらないが、その方法が大きく変わってきた。これまでのようにトップダウンではなく、それぞれが役割を担う自立したチームとして進化していくこと。移り変わりの速さをひしひしと感じながら、スピードを持って変化に対応していくだけだ、と話す。

予測不可能な時代への挑戦
目まぐるしく社会が変化していく時代に、企業として何を大切にしていくのかを尋ねると「自分も含めて、全社員が誇りを持てること。単なる作業で終わらず、商品に自信を持ち、誇りのある仕事ができる会社であることですね」だと一雅さんはいい、「もちろん売上や数字、製品の品質など、気にしなければならないことはいくつもあるけれど、ベースは人だと実感することが増えましたね」と郁夫さんは答えた。
一見、一雅さんが慎重派、郁夫さんが行動派のようにも見受けられるが、実際はその逆のようだ。兄である一雅さんは、まず遠くの目標を定め、そこに向かって方程式を立てるスタイル。一方、弟の郁夫さんは足し算と引き算を繰り返し、一つひとつ目の前にあるものを慎重に積み上げる。企業としての理想に向かい信念を持って突き進む社長と、その背中を見つめながら現実的な落としどころを探り地固めをする副社長。新しいことにチャレンジし続け企業の幅を広げるために研鑽し続ける兄と、これまで受け継いできた技術と製品力をさらに深めるために熟考する弟。まるで対照的だ。役割を踏まえて戦略的に動いている面もありそうだが、お互いのことをわかっていないとこんなコンビネーションは生まれない。次の時代を切り開いていくには最強のタッグではないだろうか。

誠実なものづくりで未来を拓く
もちろんこれは、これまで実直かつ誠実なフジイという企業を受け継ぎ、これまた実直で誠実な兄弟を育ててきた2代目夫妻の功績でもある。だとしても、期待という重圧の中で祖父の代から続く誠実なものづくりを継承するのは、なんとも骨が折れる作業に違いない。しかも、この予測不可能な時代に、である。チームの一員として走りながら常に改善を続け、現代にあったスタイルへと常にアップデートしつつ新しい価値を創造していく。そんな藤井兄弟率いるフジイのこれからに目が離せない。


