
宍粟市で毎年秋に開かれている「夢マルシェ」。手づくりの雑貨やこだわりの味、子どもたちの笑顔が集まるこの場所には、「ここで夢を語ってもいいんだ」と感じられる、やさしい熱が宿っています。このマルシェを立ち上げたのは、かつて「宍粟には何もない」と感じていたママたち。「何もないなら、自分たちで楽しい場所をつくろう」とはじめた小さな取り組みは、今では次の世代へとつながる、地域の大切な「夢の市場」になっています。
12年前に始まったママたちの挑戦
毎年秋に開催される「夢マルシェ」。早朝、宍粟市内はもちろん、兵庫県のあちこちから、そして県外からも、大きな荷物を持った出店者が駆けつける。ずらりと並ぶのは、個性豊かなハンドメイド作品やこだわりのスイーツ、淹れたてのコーヒー、そして地元の新鮮な野菜たち。子どもたちの笑顔が弾け、地元の合唱団やダンスサークルのステージが祭りを彩る。まるで“夢”が形になったような賑わいが、ここにはある。このマルシェを企画・運営しているのは「夢マルシェ実行委員会」。今では宍粟市の秋の風物詩となったこのイベントのはじまりは12年前、ママ友たちの小さな集まりからだった。

若い世代にとって魅力的なまちって?
「宍粟市がまだ宍粟郡だった20年前、わたしはまだ20代前半でした。そんな若い世代にとって、魅力的なまちではなかったと思うんです」。現在「夢マルシェ実行委員会」の運営を担う“洋飾店Sagua”さんは、振り返る。当時、地域の祭やバザーはあったものの若い層が「いきたい!」と思える場はなかった。「この子たちが大きくなった時に、今の私みたいに「宍粟には何もない」と感じてほしくない・・・」。ママとしてのスタートをきったばかりのSaguaさんは、そう思うようになった。

“何もないなら、自分たちでつくればいい”
「じゃあ、自分たちで楽しいと思える場をつくろう」と、子どもの年齢が近いママたちに声をかけ、動き出したSaguaさん。賛同してくれる仲間を集めつつ、少しずつ周囲の理解を得た。市外のイベントに出店して経験を積み、自宅ショップや1dayショップを開く中で、「(当時の)宍粟にないもの」が見えてきた。それを持ち寄り「自分たちが理想とするマルシェ」を運営するにはどうすればいいのかと知恵を絞った。そして出会ったひとりが、現在も一緒に運営を担う“Kayotama”さん。そうして「夢マルシェ」という名のイベントが生まれたのは、12年前のことだ。

運営の中心にいるふたり
当初はママ友たちの輪から始まった夢マルシェ実行委員会だったが、次第に運営の主軸はSaguaさんとKayotamaさんのふたり体制に落ち着いた。Saguaさんは企画や運営を、Kayotamaさんは事務や経理を中心に担当し、会場の確保から出店者への案内、入金管理、PRまで、すべてをふたりでこなす。「出店する作家さんたちも、運営の大変さをわかってくれる人ばかり。当日の準備や片付けも手伝ってくれて助かっています」とふたりは頷き合う。出店者はもちろん、当日は家族も総出でサポート。そうやって、みんなで大切に育て、手がけてきた「市場」なのだ。
「夢を実現できる」素敵な場を提供
夢マルシェには、毎回40〜50のブースが並ぶ。ハンドメイド作家さんの心を込めた雑貨やアクセサリーのほか、地元の飲食店や農家さんの自慢の商品も見られる。最近ではキッチンカーの出店も増え、ますます多彩な顔ぶれになってきた。
「子どもたちに喜んでほしい、このまちを誇りに思ってほしい」。そんな思いから、ステージイベントも充実させてきた。地元の子どもたちが歌い、踊る姿を見て、「自分たちのまちにこんなに素敵な場所があるんだ」と感じてもらいたい。夢マルシェは、そんな”地域の誇り”を育む場でもある。

細く長く、いつまでも続けたい
コロナ禍には「もう続けられないかもしれない」と思ったこともあった。それでも「できる方法を考えよう」と、感染状況が落ち着いたタイミングで再開し、試行錯誤を繰り返しながら今日まで続けてきた。「これからも無理なく、長く続けていきたい」。子育てが落ち着き、それぞれの作家活動にも力を入れている今、ふたりはそれぞれ、次にやりたいことも見えてきたという。「だけど、年に一度の「夢マルシェ」は、これからも変わらずに続けていきたい」。それがふたりの共通の思いだ。
「ここに帰ってきたい」と思えるまちに
かつて子どもを抱えながらマルシェを開いた彼女たちだが、子どもたちも大きくなり、自分たちの道を目指して歩く年代となった。「子どもたちが大きくなって一度は外に出ても、またここに戻ってきて、夢を実現できるような、そんな地域にしよう」。そう決意し、子どもたちの笑顔と、そして地域の未来のために、少しずつ「夢」を紡いできたSaguaさんとKayotamaさん。次の世代へのバトンのような“夢の市場”を、今年も、来年も、その次の年も、開き続ける。


